バレエのチケットを買うのは難関です 16 / JUL / 2007 *MON*



上のベッドの男が飛び降りてトイレに行ったので目を覚ますと6時半。よく眠れた。すぐ顔を洗って降りる準備をする。
ペトロザボーツクから8時間半。朝7時20分、サンクト・ペテルブルグに着いた。あれよあれよとロシアも最後の町である。

5つあるターミナル駅のひとつ、おもに北極圏方面やフィンランドからの列車が発着するラドーガ駅は近代的でとてもきれいだが、切符売り場は窓口が少なくて長蛇の列ができている。この時間ではまだ観光スポットも開いていないし、ホテルにチェックインもできないだろうとみて、とりあえず荷物預かり所にトランクを預けて町に出た。
ジェトンという専用のコインを3枚、3回分だけ買って(1回12p=55円)メトロに乗る。ペテルブルグのメトロの深さはモスクワ以上かもしれない。ここまで深くする必要がなぜあるのか、作る方も乗る方も時間かかって大変なのにと思うが、これもモスクワ同様核シェルターにするつもりだったからだろうか? あまりのエスカレーター長さに時間をはかると地上からホームにたどり着くまでに3分近くかかっている。それも日本のそれの1.5〜2倍の高速運転で、である。

小雨がぱらつく中、ネフスキー大通りを3kmくらい歩いてみた。血の上の教会(19世紀、皇帝アレクサンドル2世が暗殺された場所に建てられたメモリアルだそうで、そんなおどろおどろしい名前)は外観も奇抜ながら、内部の壁という壁をいつくしたモザイク画に圧倒される。ブルーの七宝タイルを基調にしたモザイク画はイタリア人アーティストとの合作らしい
が、これほどまでにモザイク装飾で埋め尽くされた教会はほかに見たことがない。でも、これまたどうして、ここまでモザイク画にこだわる必要があったんだろう??
教会周辺には土産物のマーケットが出現しているが、モスクワのヴェルニサージュを予想外に満喫してしまったあとでは、目新しいものがなくて即退散。

       

そうこうしているうちに昼になり、やけにお腹も空いたしで歩き方掲載の‘ウ・チョーシチ・ナ・ブリーナフ’ていうセルフのレストランまで、またネフスキー大通りを2kmくらい戻った。わざわざ戻っただけのことはあった!

野菜スープ ★★★★
肉のブリヌイ(クレープ包み) ★★★★
ニンジンのブリヌイ ★★★★★
ケーキ ★★★
170p(800円)
ああ、今日もなにを食べても美味い。ロシアは観光するにはわりと退屈だけど、ロシア料理はかなりイケてる。見た目は地味だけど、ハズレがないの。
特にニンジンのブリヌイが、具もクレープ皮もすご〜〜〜く美味くて、また明日もこれ食べに来たいと思ったくらい。この店、日本にそっくりそのまま持って帰ってもはやると思うんだけどなぁ。

その足で、昨日ネットで調べておいた、今夜のバレエ『白鳥の湖』のチケットを買うべく直接アレクサンドリンスキー劇場に行ってみた。が、カッサ(チケット売り場)窓口にたどり着くまでにおおいに迷った。といっても公演時間外に劇場に入るこ
とのできる入り口は1箇所だけ。1階にいくつかあるうちの扉が1箇所だけ開いてはいたのだけど、さらにその奥にある関係者以外立ち入り禁止っぽい雰囲気の木の扉を開けて内部に入らなければカッサにたどり着けない。結局外から3重のドアを通らねばならない仕組みになっていて、売り場を見つけるところからしてものすごく難関なのだ。外にチケットとかカッサなんていう表示もいっさいないのだ。
カッサまで3重になってる扉のうちの3つめ
そしてやっとたどりついた窓口のおばさんは、ほとんど英語を解さないのだった。

ヤー ハチュー ビリエート ナ スワンレイク
スィヴォードニャ・・・??
    苦笑。

ガイドブックに載っていた‘〜のチケットがほしいのですが’の文章をそのまま棒読みしてみたら、途中から棒読みっぷりが自分でもおかしくなって笑っちまうおかぽん。おばさんに
???という顔をされ、まったくもって通じてないところにまた苦笑。コントっぽくなってきた・・・。結局は
「スワンレイク、トゥデイ!」
の方が通じたりするんである。しかしその先が問題。座席が大問題。
「パルテール(一階席)? ベリエターシ(2階席)?」
これまたガイドブックに載ってる通りに種類を聞いてみても、おばさんは首を横に振るばかり。座席表ってないの?と、それもロシア語では言えないし、かといってジェスチャーや英語でも通じそうになくて
おかぽん  「バルコーン(三階以上)は??」
おばちゃん 「ニエット・バルコーン」
おかぽん  「エニイシート、エブリウェアー・オーケー!」
あーもう、
どこでもいいから1枚おくれ。と最後はヤケクソで無理やり英語で折れたのだった。おばちゃんが差し出したチケットは900p(4200円)、値段は思ったよりずいぶん安い、ということは上のほうのバルコーンのさらに後ろの方なんだろうか。チケットを手にしてもなお席がどこだかは全然わからん。そんなチケットをボケーと見つめる私を見かねたおばちゃんが笑いながら扉の向こうから出てきて、一生懸命
解読不能なチケット
エイト!エイト!
って言う。今日はあと8席しか残ってないのよ、と言ってるんだと妙な思い込みをした私であるが、実はそうじゃなくて、開演は8時だから遅れずにね、と言っていたのだ(たぶん)と気づいたのはなんと旅を終えて帰国してからだったりする。(爆)
いやはやお騒がせしました。でもおばちゃん、いい人でよかったよ。(^^;

  

ネフスキー大通りからホテルまで歩いて行くと30分近くかかったが、ちょうど2時過ぎでチェックインが始まったところ。古くて広いだけの味気ない部屋に素泊まり3泊で4万円近くも払うのはただでさえ腑に落ちないが、さらにニコリともしないレセプションのスタッフや、不機嫌そうに掃除するフロアスタッフと顔合わせなきゃいけないところが、この国を旅するうえで精神衛生上最もよろしくない点かもしれない。
少し休んで、しなければいけない大仕事がひとつ。駅に預けたままのトランクを取りに行くことである。メトロはやはりエスカレーターが異常に長くて時間がかかり、一駅の距離も相当長い(とてもじゃないが一駅は歩けない)。ホテルからラドーガ駅まで行って戻るだけで1時間半もかかり、そうしてやっと、3日ぶりにトランクを開けて服を洗ってシャワータイム。のんびり髪を乾かしたりしてるともう7時前。
また劇場に行かないと!(汗)

劇場前広場のアイスクリーム屋台でアイス(20p=95円)を買って食べて会場入り。そこそこオシャレしたりフォーマルな格好の人もいる一方、ジーンズな人もいて服装はどうでもいい感じ。例によって席がどこだか皆目見当もつかない私は、
入り口で待ち構えていたタキシードの案内人じいさんにチケットを見せ、その、紳士だけどもロシア語オンリー(何か言うんだけどコミュニケーションは全く不可能・・・汗)なじいさんについていくと、通された席は2階のバルコニー席前列だった! ステージに向かって左の端だけど、ステージは思ったよりうんと近くてよく見えるしすごくいい。劇場はよく映画に出てくるみたいな5階バルコニーまである円形ホールで、意外にこじんまりしているところがまたよい。1300人しか入れない、ということは地方の市民会館の中ホールくらい? 私の円形バルコニー席デビューはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールであり、その昔500円くらいの当日券でラフマニノフを聴いて震えるほど感動した夜のことを思い出した。ヨーロッパならではのこのクラシカルな雰囲気は大好きだし、安いチケットでも心を掴まれるクオリティの芸術がほぼ毎夜何かと披露されているところはさすがヨーロッパとしか言いようがない。

チケット売り場のおばちゃんが「8席しかない」と言ってたわりに、それ
ほど埋まってねーじゃん、と思いながら(苦笑)20時にスタートした公演は、バレエはもちろんオーケストラの生演奏も超一流だった。バレエ鑑賞ははじめての私でも、すごいレベルであることくらいはわかる。世界何万人の中から選ばれたダンサーたちなんだなぁ、と思うだけで嬉しくなってきた。プリンシパルが絵に描いたような王子ルックスなのにも。
途中2回の休憩があった。幕間に階下におりてみるとバーにはイクラやサーモンのカナッペが並んでいて、皆が飲んでいるシャンパンがやたら美味しそうに見え、自分も飲んだりして(200p=950円もしたけど)。ふと日本人の声がしてちょっとびっくりしてしまった。
「悪役、ちょっとデーモン小暮に似てねぇ?」
それにしても本場のバレエは素晴らしかった。ものすごいジャンプ力と絶対的なバランス感。空中スローモーションな静けさと肉体美に、ロシアにいることさえ忘れてしまいそうだった。帰国して日本でもバレエを見て、このロシアの公演がどれほどのものだったか確かめたい。
もう観光してまわるより、生の芸術にふれているだけでいいかも・・・。
22時40分に公演が終わり、外に出て、まだめっぽう明るいことに改めて驚いた。しかし人通りは少なくなった道を、30分も歩いて帰った。とってもすがすがしい気分で。

                                        サンクト・ペテルブルグの写真はPHOTOページ
                          (SHIBERIAN RAILWAY ST.PETERSBURG1)に別途掲載しています




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